ここる訪問看護ステーション

吃音の子が学校で苦しむ本当の理由と、今日からできる関わり方


1. 吃音(きつおん)ってどんなもの?

吃音は、言葉がスムーズに出てこない状態を指し、主に3つの特徴(症状)があります。

● 繰り返す(連発): 「ぼ、ぼ、ぼくね」と、最初の音を繰り返す。

● 引き伸ばす(伸発): 「ぼーーくね」と、最初の音を長く伸ばす。

● つまる(ブロック): 「……っぼくね」と、最初の音が出ず、間があいてしまう。

これらは、お子さんの努力不足や育て方のせいではなく、言葉を出すための脳の指令と、お口の動きのタイミングがうまく合わないことで起こる「体質」のようなものです。

吃音(きつおん)を持つお子さんにとって、学校は学びの場であると同時に、コミュニケーションの不安が絶えない場所でもあります。吃音はその時々の体調や緊張度によって波があるため、周囲に正しく理解されにくいという難しさがあります。


学校生活の中で直面しやすい問題を、具体的な事例を挙げて解説します。

1. 音読や発表などの「話す」場面での困難

学校では「決められた時間内に、大勢の前で話す」場面が多く、これが大きな心理的負担となります。

● 国語の音読: 自分の順番が回ってくるのが分かると、心拍数が上がり、喉が詰まったような感覚になります。つっかえてしまった際に、クラスメイトからクスクス笑われたり、先生から「落ち着いて」と言われたりすることが、さらなるプレッシャーに繋がります。

● 出欠確認や日直の号令: 「はい」という返事や「起立、礼」といった決まった言葉(固定語)が出にくいタイプのお子さんの場合、返事が遅れることで「話を聞いていない」と誤解されることがあります。

2. 誤解やからかいによる自尊心の低下

吃音の症状(繰り返し、引き伸ばし、ブロック)が、周囲には「ふざけている」や「真似をしている」と見えてしまうことがあります。

● からかいや模倣: 言葉が詰まる様子を面白がって真似される事例です。これにより、「話すと笑われる」という学習をしてしまい、次第に発言を控えるようになります。

● 「言い換え」による能力の過小評価: 言いにくい言葉を避け、別の簡単な言葉に言い換える「回避」を行います。その結果、本来持っている語彙力や思考力を十分に発揮できず、学力や意欲が低く見積もられてしまうことがあります。

3. 人間関係・集団生活における孤立

言葉が出にくいことで、友達とのスピード感のある会話についていけなくなる場面があります。

● 休み時間の会話: 冗談を言おうとしても、言葉が出る頃には話題が変わっていることがあります。

● グループ学習: 自分の意見はあるのに、話し出すタイミングを逃してしまい、「意見がない子」「消極的な子」として扱われてしまうケースがあります。


2.周囲ができる配慮のポイント

吃音の困りごとは、「話し方」そのものよりも「話すことへの恐怖心」を肥大化させないことが重要です。

1. 「最後まで待つ」姿勢: 言葉を先回りして補ったり、「落ち着いて」とアドバイスしたりせず、自然なアイコンタクトで最後まで聞き終えることが、お子さんの安心感に繋がります

2. 音読の工夫: 一人で読ませるのではなく、先生や隣の席の子と一緒に読む「斉読」を取り入れるなどの配慮が有効です。

3. 理解教育: 担任の先生と連携し、クラス全体に「人によって話し方のスタイルは違う」という多様性を伝えることで、からかいの発生を防ぐ環境づくりが望まれます。

吃音があっても、自分の思いを安心して表せる環境があれば、お子さんは自信を持って学校生活を送ることができます。

3.言語リハビリの具体的なアプローチ

お子さんの年齢や状態に合わせて、直接的・間接的なサポートを組み合わせて行います。

① 環境調整(ご家族へのアドバイス)

特にお子さんが小さい時期(幼児期)は、周囲の関わり方を変えるだけで、吃音が落ち着くことがよくあります。

● お子さんの言葉を最後までゆっくり聞く、せかさない、話し方を指摘しない(「ゆっくり話して」と言わない)といった、安心できる環境作りをアドバイスします。お子さんが「どもっても大丈夫なんだ」と安心でき、言葉を出すことへの恐怖心がなくなります。

② 話し方の工夫(直接的な練習)

学童期以降など、本人が自分の吃音を意識している場合に行います。

● 言葉の出だしをやわらかく出す練習や、話しやすいスピードを一緒に見つける練習をします。 言葉がつまった時の「抜け出し方」を身につけることで、会話への苦手意識を減らせます。

③ メンタルケア(自己肯定感のサポート)

吃音があっても、コミュニケーションを楽しめる心を育てます。

● 吃音について正しく知り、自分の特徴として受け入れる(ディスクロージャー)練習をしたり、お話しできた達成感を積み重ねたりします。

● 吃音を隠そうとして話さなくなるのを防ぎ、学校生活や発表の場でも堂々と振る舞えるようになります。

4. 言語聴覚士からのメッセージ

吃音のあるお子さんは、言葉選びが丁寧だったり、相手の気持ちに敏感だったりする優しい一面を持っていることが多いです。

リハビリは、吃音をゼロにすることだけがゴールではありません。「どもりながらでも、伝えたいことを最後まで言えた!」という経験が、お子さんの人生を支える大きな自信になります。訪問看護のSTは、ご家庭や園・学校とも連携しながら、お子さんの「話したい」という勇気を全力で応援します。

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