ここる訪問看護ステーション

「朝起きられない」毎日のバトルを卒業する睡眠ケア

「朝、何度声をかけても起きない」

 こどもが特に中学生以降になって、起床を巡った親子バトルが深刻化している…これってうちだけなのかな?いいえ、実はそのようなご家庭は少なくありません。優しく声をかけても子どもは反応せず、強く言えば逆ギレ。遅刻が心配で結局怒鳴ってしまい、後から「私、母親失格なんじゃないか…」と自分を責めてしまう。

そんな経験、ありませんか?

 まず最初に伝えたいのは、朝起きられない問題は単なる「怠け」ではない可能性高いということ。実は、朝起きられないのは思春期特有の「睡眠相の後退」という現象や、複雑な心理、生まれつきの脳の特性である発達障害(神経発達症)、さらには精神疾患の可能性など、沢山の要素が絡み合っているのです。

思春期に起こる「体内時計」の変化

 思春期に入って間もない頃(概ね13〜15歳)は体内時計が後ろにずれやすく、夜更かしと朝寝坊がセットになりがちといわれています。というのも実は、睡眠の基である【眠気】は、【メラトニン※1】というホルモンの作用によるもので、このメラトニンは二次性徴を促すために思春期には減ってしまうのです。そのため、思春期は眠気が後ろ倒しになりやすい、つまり、なかなか眠くならないと言われています。また、メラトニンは目で光を感知すると分泌されにくくなるため、スマホやSNS、ゲームといった光や刺激を夜受けることは、睡眠リズムを狂わせる原因となります。さらに、思春期は自我(アイデンティティ)を確立する時期。二次性徴という体の変化に加え、学校生活の不安や気分の落ち込みなども加わりやすい時期です。これらの心と体が大きく変化する時期であることから、体内時計がずれやすい時期なのです。

さらに、もう少しお兄さん・お姉さんになると(16〜18歳)、今度は進路のプレッシャーや将来の不安、といったメンタル面への負荷が大きくなることから、入眠困難(なかなか寝つけない)や中途覚醒(途中で目が覚める)が増え、心身ともに「夜型」から抜け出せなくなるケースも少なくありません。

その睡眠、もしかして?

 (1)発達障害

 ADHD・ASDのお子さんは夜間のメラトニン分泌量が少ない、又は、分泌されるタイミングが数時間後ろにズレる傾向が強いことが、国内外の研究で明らかとなっています。ADHDは脳の覚醒を制御する神経が不安定で夜も過覚醒になり入眠が妨げられ、ASDは衣類の感触や生活音等への感覚過敏の影響で、布団の中ですぐにリラックスすることが難しく不安や就床抵抗が生じやすいと指摘されています。

(2)起立性調節障害(OD)

 ODは思春期の急激な成長や熱中症、その他様々な要因が契機となって自律神経が乱れることにより発症するといわれています。自律神経が乱れてしまっているため、夜間に交感神経が鎮まらずなかなか寝付けない、一方で朝は交感神経のスイッチが入りにくいため起きられない、という症状が起こりやすくなります。

(3)うつ病や不安障害が隠れていることも

 メンタル不調による睡眠障害はそれぞれ原因が異なりますが、いずれも脳内の神経伝達物質やホルモンバランスが乱れていることによる現象です。生活習慣の乱れが先か、過剰なストレス・継続したストレス状態が先かはケース・バイ・ケースであるため、医師の診断を基に慎重に判断していくことが大切です。服薬中の方は副作用も考慮する必要があるため、安易に判断しないことが大切です。

親子で取り組む「睡眠ケア」のヒント

 こどもがなかなか起きなくてイライラする、そんな時は「起こすか、起こさないか」の二択思考からちょって離れみましょう。具体的には、以下のステップを試してみてください。※発達障害やうつ病がある場合はこの通りではありません。個別性に配慮したケアが大切となるため、一度、私たち訪問看護や医師といった医療従事者にご相談ください

(1) 家庭でできるリズム作り

①起きる時刻を固定する:睡眠が乱れている場合、夜の過ごし方を整える方に意識が向く方が多いのですが、実は重要なのは【朝】なんです。というのも、睡眠は朝、日光を浴びることで眠気を誘うメラトニンの分泌がおさまり、逆に目覚め(覚醒)を促すセロトニンが分泌されるからです。そうした体の仕組みを使って、 休日も同じ時間に朝の光を浴び、朝食を摂るといった【リズムを固定化】することで、少しずつ睡眠リズムが安定してきます。

②寝る前の刺激はパターン化で制限する: スマホやゲームは「やめる時間」より「切り替えのルーティン」を決めます。入浴や読書など、静かな行動へ繋げて自分の心を落ち着かせる合図(トリガー)やルーティーンを決めます。

③栄養学を活用する:眠気を誘うメラトニンは、朝分泌されるセロトニンが基になっています。そのため、朝セロトニンが脳内で十分つくられることが重要なのですが、このセロトニンはある特定の栄養素を含んだ食事をとらなければ体の中で作ることが出来ない、といわれています。そのある特定の栄養素というのが【トリプトファン】という、タンパク質を合成する一種のアミノ酸です。大豆製品(納豆,豆腐,味噌など)やバナナ、卵、魚、乳製品(牛乳,チーズなど)。脳内でセロトニンがメラトニンに変化するのは、トリプトファン(アミノ酸)を摂取した約14~16時間後といわれています。そのため、例えば夜21時に寝たいとならば、逆算して朝7時にゆで卵やバナナスムージーを摂取することが効果的です。朝ごはんをとると消化器官が動き出し、脳に糖分をはじめとする栄養素が一気に送り込まれるため、日中の活動(勉強や運動など)が精力的に行いやすくなる、というメリットもあります。

④睡眠日誌の活用:文字にして認識する(記録の可視化)というプロセスは、セルフマネジメントに効果的であることが心理学でわかっています。これはセルフ・モニタリングという行動療法の手法で、記録という視覚的なフィードバックをが脳内の目標と現実のズレを認識することにつながり、自分の状態を客観視できることで、行動変化を促すことが出来る、といわれています。何事にも通ずる「離見の見(りけんのけん)」ですね。

(2)朝のバトルを減らすためにできること

①動線設計:特に、ADHD傾向の子は「朝、考えることが多い」とフリーズしてしまいます。そのため、前夜に 制服や靴下をセットし、カバンは玄関へ。朝食はトレーにまとめ、【迷わず動ける環境・導線】を作ります。

②自分達だけで頑張り続けるのをやめてみる:親子だで知識を深め実践し続けることは、本当に骨の折れることです。私たち訪問看護のスタッフの殆どは、子育て中のママ・パパです。言葉に表せない色々な葛藤ややるせなさ、徒労感など、みんな身をもって体験しています。また、医学的な知見に基づいて対応することで、本人も家族もとても楽になります。「もう限界…」と思うその前に、私たちにぜひご相談ください。

③行動のたびに小さく認めていく:思春期にもなると親子ともども恥じらいが出てくるかもしれませんが、例えば「目を開けられたね」「制服に着替えたね」「朝ごはんを食べているね」といった【行動の事実を認める言葉を発する】のも効果があります。指示をするのではなく、今の行動を実況するように声をかけるだけで、子どもは「見守られている」という安心感を得て、少しずつ自分から動けるようになることも多々あります。

(3)少しずつ本人に任せていく

平日は短い声かけや動線設計で【伴走】し、休日は「自分で起きられた」と自覚できる時間を設ける。少しずつ【責任を任せるこ】とで、子どもは自分の時間管理を学んでいきます。

毎朝のイライラは、あなたとお子さんが必死に生活しようとしている証拠です。まずは「今日、少しでもできたこと」を見つけて、自分自身を認め・褒めてあげてくださいね。そして親も子も【色んな人に支えられながら進む】ことが、リズムは整える最短ルートかもしれません。あなたは決して一人ではありません。ぜひ、私達にその辛さ・苦しさを話してみてください。~ここる訪問看護ステーションはこどもとご家族のためのステーション ご連絡お待ちしています~

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